
毎年この時期になると、コンサルティング会社やリサーチ会社からウェルネスの未来予測が発表されます。
今年も例外ではありません。McKinsey、Mintel、Bainが、それぞれの視点から2026年のウェルネスを分析しました。
3つのレポートが扱う領域は少しずつ異なります。しかし、並べて見ると、一つの方向性が浮かび上がります。
ウェルネスはもはや産業の一部ではなく、消費者のアイデンティティそのものへと移行しつつあります。
優先事項になったウェルネス、それでも届かない目標
McKinseyの「Future of Wellness 2026」の事前調査によると、消費者の84%がウェルネスを人生における最優先事項の一つとして挙げています。この割合は年々高まっています。
一方で、同じ調査では、自分自身のウェルネス目標を実際に達成できていると回答した人は13%にとどまりました。
優先順位と実際の行動とのギャップは、低所得層や都市部以外に住む人々において特に大きくなっていることも示されています。
このギャップは、単純に意志の強さだけの問題とは考えにくいものです。
今後のウェルネスブランドにとって、どれだけ簡単に始められ、無理なく継続できる商品やサービスをつくれるかが、実質的な競争力になる可能性があります。
世代別に見ると、Gen Zとミレニアル世代がこの変化を先導しています。全人口の約3分の1にすぎない一方で、年間のウェルネス支出の40%以上を占めています。
ビューティーが「診断」になる瞬間
Mintelは2026年のビューティー・パーソナルケア市場について、3つの方向性を示しています。
一つ目は、健康、テクノロジー、パーソナライゼーションがビューティーの中へ収束していく流れです。
美容液や健康食品が、単なる美容・栄養アイテムにとどまらず、ウェルネス状態を理解するためのツールとしての役割まで担うようになると予測されています。
二つ目は、感覚の役割の拡大です。
感情的なウェルネスへの需要が高まるにつれて、ビューティー体験は結果を提供するだけでなく、気分や感情を整える方向へと広がっています。
最後は、アルゴリズムの先にある人間らしさです。
完璧に最適化されたものよりも、人間らしく、感情的にリアルなものを求める消費者が増えているという見方です。
この3つの方向性に共通しているのは、一つの大きな変化です。
ビューティーというカテゴリーは、もはや外見だけを扱うものではなくなっています。
身体の状態を読み取り、感情を整え、自分らしさを確かめる場へと移行しています。
人々が再び求めているのは「体験」
Bainの「2025 Global Luxury Report」は、ビューティーよりも少し広い視点から、同じシグナルを捉えています。
ホスピタリティ、ファインダイニング、ウェルネス、旅行など、体験を中心としたカテゴリーが近年の市場成長の大部分を牽引しているという分析です。
一方、所有を前提とする商品カテゴリーは相対的に成長が鈍化しています。
これは、消費者が財布を開く基準が、
「何を所有するか」から「何を体験するか」へ
移りつつあることを示しています。
ウェルネスがこの流れの中心にあるのは偶然ではありません。
ウェルネスはそもそも、単純に所有することのできないものを扱うカテゴリーだからです。
良いルーティンも、回復した感覚も、最終的には体験を通してしか得られないものです。
3つのレポートが共通して示すこと
McKinseyはギャップについて語っています。
Mintelは境界の崩壊について語っています。
Bainは消費基準の変化について語っています。
表現は異なりますが、指し示している方向は共通しています。
ウェルネスはもはや一つの商品カテゴリーではなく、人々が自分自身を理解し、自分を表現するための言語になりつつあります。
そう考えると、次の問いは自然に生まれます。
ウェルネスがアイデンティティになるとしたら、ブランドはそのアイデンティティの隣に、どのように存在すべきなのでしょうか。






